抗がん剤治療の副作用は、実際にやった本人でないとわからない。
だれにどう慰められても、「個人差がありますから」と言われても、
副作用が出るものは出るし、辛くても誰かが代わってくれるものでもない。
しかし、治療の副作用を、自分がどう考えるかは自由だ。
その考え方で、その後の気持ちは、(たぶん回復力も)がらりと変わることを
大勢の患者さんに教えていただいた。今日は、その話。

抗がん剤治療では、分裂し続ける「がん細胞」だけをやっつけてほしいけれど、
「正常細胞」も、分裂が盛んな細胞は狙われる。
(血液をつくる骨髄、髪が伸びてくる毛母細胞、爪の爪母細胞、皮膚、口腔や消化管の粘膜・・・)
しかし、がん細胞と正常細胞はちょっと違う。
正常細胞は、打たれてもがんばる!
がん細胞は、イカツイ顔をしているが・・・足元はゆるい。ちょっとへなちょこ。
一度抗がん剤を打つと、確かに、がん細胞も正常細胞も両方転ぶ。
正常細胞は、3週間もすればぐぐぐーっと立ち上がってくる。がんばり屋さんだ。
(白血球も上がってくるし、身体も楽になるし、髪だって本当は生えてこようとしている)
一方、がん細胞は、一度打たれると、なかなか立ち上がれない。
がん細胞が転んでいる間に次の抗がん剤を打つと、さらに、がんはやられて消えていく。
抗がん剤治療は、自分の「正常細胞」の力を信じて続ける治療だ。

私は、毎日、抗がん剤治療による脱毛準備で、TODAY!にウィッグや帽子を吟味しに来られる患者さんにこのお話をさせていただく。
「脱毛がイヤだから、抗がん剤治療はやりたくない!」と不安でいっぱいの方もいらっしゃる。
でも、やることは決まっている。だったら、どう考えてやるかだ。
この1年、私は患者さんに、ある実験をお願いしてみた。

脱毛が始まったら、「わー、抜けてきた!脱毛イヤ、絶対イヤ!」と思うと、ますます辛く、かなしくなるので、
曽我: 『「正常細胞はがんばってくれている!」から、「ありがとねっ。また生えてきてねっ。待ってるからね。」とやさしく声に出して言ってみてください。そして、何か気持ちに変化があったら、曽我に教えてください。』

すると、予想以上に大勢の方からご連絡をいただいたり、再びTODAY!に来られたときに、お話を聞かせていただくことができた。

『ありがとう』と試しに言ってみたら、全然気分が違い、身体ががんばっている!と感じた」
「辛い日もあったけど、自分の身体を大切に思えた」
「脱毛し始めはさすがに驚いたが、ありがとう、と言い続けたら、だんだん気分がさっぱりしてきて、寂聴さんになったみたい(笑)」
ある患者さんからは、「抜けた髪が愛しくて、大事に思えて、処分できない。どうしたらよいか」というお電話まで。
また、別の方からは、「白血球が下がって、次回の抗がん剤が打てないかもしれないとドクターに言われたけど、明日は絶対打てるような気がします」
「なぜ、わかるのですか」と曽我がうかがうと、
「不思議なのですが、自分の身体に声をかけていたら、逆に身体の声が聞こえるというか・・・、わかるようになってきた」と。

身体は、細胞一つ一つまで、自分の思いや声を聞いているのだろう。
細胞一つ一つにも、感謝やエールを送ることが、自分を大切にする始まりではないだろうか。抗がん剤の副作用は、自分にしかわからない辛いこともある。
治療中の方には、「何言ってるんだ、曽我!」と怒られるかもしれないが、
それでも私は、「あなたの身体は、がんばってる!すごいんだ!」と言いたい。
脱毛も、むかむかも、足のしびれも、むくみも、いろいろ・・・あるけれど、
がんばっている正常細胞に、「ありがとねっ。よくがんばってるよ。」
言ってみてほしい。痛いところは、やさしく撫でたりしながら。


抗がん剤の副作用による脱毛の流れ 

datsumou