生涯で2人に1人が<がん>という病を経験するがん大国日本。
しかし、自分ががんになるまでは、がんのことは知りたくない、考えたくない、という人は多い。身内や友人にがん患者さんがいると、そばでサポートしたり、情報を集めたり、自分自身も検診にまめに行ったりするかもしれないが、だからと言って、がんという病の実感が持てるというものでもない。
ところが、実際に、自分ががんの告知を受けると、その瞬間に<がんが自分のこと>になる。突然、ほぼ未知の世界<がんワールド>に、投げ込まれたような感じだ。
この時点で、<がんワールド>を通り抜ける地図の用意はない。さあ、ここから、どうするか。
この11年間、17万人以上のさまざまな状況のがん患者さんと密に関わってきて、学ばせていただいたことから、私、曽我の考えをお伝えしたいと思う。
<がんワールド>の入り口に突然立たされた<私>は、光の見えない暗闇の中で、しばらくは何も考えられないかもしれない。どこを進めばよいのか、道はあるのか、明日はくるのか。不安で怖い。
このとき、真っ暗で、行く道が見えなくても、まず、「この<がんワールド>を抜けるんだ!」と自分宣言してほしい。「がんを治す!」と。病状によっては、本当に治るのだろうか、私はこれからどうなるのかな、などと不安に思うこともあるだろう。しかし、どうあろうと、闘志満々でなくてもよいので、「病気を治す」「ここから抜け出す」という目標を自分の真ん中に据えてほしい。
「そんなの当たり前だろう!」と、思われる方も多いだろう。私もそれが当たり前だと思っていた。しかし治療を進めていくうちに、途中から、「治す!なんて簡単に言わないで。『がんと付き合いながら生きる』ぐらいの考え方のほうが、気持ちにぴったりくる」と思うようになり、『がんと付き合いながら生きる』という言葉を頻繁に使うようになった。私ががんの告知を受けた10数年前は、「がんと闘う!」とよく言われていて、「がんと付き合う」という言葉は使われていなかった。しかし今は、よく、この言葉が使われるようになっている。そんな中で、私は今、改めて言いたい。まずは、「がんを治す」と宣言することだ。「がんワールドを抜けるぞ」と。
なぜそう思うようになったかと言えば、「付き合う」と思えば、がんと付き合うことになるし、「治す」と思えば治すことに向かって進むことになるからだ。それぐらい、自分で思ったこと、考えたことが、身体や心に影響を及ぼすことを、私はこの10数年で、目の当たりにしてきたのである。自ら「がんワールド」の中にどっぷりとはまり込んだり、迷路のようにぐるぐる廻り続けないためにも。
人任せにはできない自分の大切な身体、心、命を持って、<がんワールド>を抜け出す旅に出るのである。
さて、この旅路では、
(1)医学の力を借りる部分は最大限借りる。
(2)自分の力を信じて自分でできることは自分でしっかりやっていく。
一歩一歩、あわてず、焦らず、丁寧に進んで行こう!
(1)医学の力を借りる、という場面では、
「西洋医学」と「東洋医学」の戦いや、
「抗がん剤は毒だ!」「いや、そうじゃない!」という論争などに振り回される必要はない。
だれがなんと言おうと、治療をするのは、だれでもない<私>自身。この道は、だれも代わって歩いてくれない。
<私>ができる内容をしっかり見極めて、選んで、実践し、責任を取るのである。
専門家の力は大いに借りるが、全面的に丸投げお任せをするのではない。
難しそうではあるが、方法は十分ある。あきらめたり、投げ出したりする必要はない。
(2)自分の力を信じて、自分でできることをしていく、という場面では、
がんは、生活習慣病と言われるが、ここで自分の生活を見直すチャンスでもある。
変えられるものは変えて、すっきりしよう。
「食事」、「運動」、そして、私が最も重要だと感じるのは、「考え方(心の態度)」である。
「考え方」のクセを見直すチャンスでもあるし、「心の態度」をどう持つかで、治療中の気持ちも、身体や心の回復力も、さらに、その先の人生までも全く違うものになることを知ることができる。
(1)と(2)を実行しながら、
<がんワールド>の中を進んでいく姿勢としては、
①必要な地図をゲットして、あわてず焦らず一歩一歩進む。
②不要な思い込みを捨て、取り越し苦労をしない。
③自分でできることは喜んでする。
④感謝しながら進む。
この4つがあれば、<がんワールド>にどっぷりはまり込んだり、同じ道をぐるぐる廻り続けたりはしないはずだ。それぞれについての詳しいこと、具体的な方法や考え方は、ことあと一つ一つブログに書いていこうと思っている
(なお、「曽我のブログの更新が遅すぎて待てない!(笑)」・「いま、迷いの中にある!」・「いま、どうにかしたい!」という方は、曽我の「生活と心の相談」をご利用ください。)
人生の道に、突然出現した<がんワールド>。
ここを抜け出す旅は、厳しく、困難に思える・・・のだが、
曽我、はっきり言っておこう。
『ここは人生の終着点ではなく、通過点にすぎない。』
この旅(がん体験)そのものが、
自分の身体と心と魂に、しっかりと向き合う『大事なツール』となる。
このツールを利用して、このあとの人生をさらに自分らしく生き、味わい深いものにすることができるのである。
がんワールドを抜けて、ドアを蹴りあけ、ますます輝きを増して生きる人たちを曽我は大勢見てきた。一見困難すぎるように思える一つ一つが、本当は「幸せの種」で、この種を「幸せ」に実らせることができるのが、人間の真の命の力だと確信している。あなたにも、私にも、必ずできる。私はこれを伝えたくてこの仕事を続けていると言ってもいい。
どんなときも、自分の命の力を信じて、あせらず、一歩一歩進んでいこう。