ブログの更新が遅くてごめんなさい。義母が寿の命を全うし、家族で感謝のときを過ごしていました。ここからは、完全に私事。家族の話です。

mamarin
私は、がん闘病中に別居、離婚を経験し、もう二度と家族を持つことはしたくないと思っていたのだが、縁があって再婚し8年になる。現在の夫と初めて出会ったのは大学卒業直前、アメリカに短期の語学留学に行ったときだ。しかし、その後は会うこともなく、私ががん闘病後、この仕事を始めて数年経ち、
18年ぶりぐらいに再会したのだ。たまたま、雑誌アエラの記事に出た小さな私の写真を見つけて訪ねてきてくれた。当時私は、がん体験を通して、気持ちが突き動かされるままこの仕事を始めたのはいいけれど、続けていけるかどうかもわからず、スタッフが帰った後も会社に残って、週に何日も徹夜で仕事を続けていた。

 

そんなタイミングで、「大丈夫?ちゃんと仕事できてるの?手伝おうか?」と声をかけてくれたのである。心配して訪ねてきてくれたのに、当時の私は、「どうせ、雑誌を見て、かわいそうだと思って言っているだけでしょ。正直、面倒なことはごめんなんだよね」というようなおごった態度で、「いままでの仕事も何もかも、全部捨てて手伝ってくれるなら、いいよ。」と冗談で言った。商社でバリバリ仕事をしていた彼への断りのつもりだった。しかし、数か月後、彼はすべてを整理して、というか、すべてを手放してやってきたのだ。当時の私は、自分一人でがんばっているつもりになっていて、人の気持ちを考えたり、大切にしたりすることができない人になっていたのだろう。猛烈に反省。そして、突然、私は、大切なパートナーを得た。神様はいるのだと思った。

しかし、たぶん、この再婚は、義母にとっては、ありえないことだったと思う。この選択、息子は幸せになれるのか、と、心配でたまらなかったのではないかと思う。でも母は、私には何も言うことなく、私を家族に迎えてくれた。

母は70代初めまで看護師をして、二人の息子を育てあげた。母自身、親を知らずに育ったそうで、先に逝った義父と息子達を一身に愛して生きた人である。数年前から認知症で施設に入っていたが、私達が駆けつけたときは、眠るように肉体の活動を終えていた。

 

私は、宗教を持たないが、自分が病気を経験してから、生きること、死ぬこととはどういうことなのか、自分がこの世に生まれてきた意味は何なのか、を考えるようになった。前にも書いたが、闘病中は自分の生きている意味がわからず、さまざまな本を読み漁ったこともある。

そして、いろいろ考えたり経験したりするうちに、いつからか、私のなかでは、生と死があまり変わらないことのように思えるようになっていった。この肉体は役割を終えても、魂は繋がっていく。肉体の別れは、とてもさみしいが、母の魂を感じ続けている。

 

母を見送るために、俄に浄土宗について学んだ。宗祖法然上人は、私の別れた実父が生まれた美作の地(岡山県北)で生まれた。南無阿弥陀仏と唱えるだけで、極楽浄土に往ける。法然上人は880年も前に、それまで貴族のものだった仏教を、いつでもだれでもできる形で庶民に広げた人である。

ご住職のお念仏が、不思議なのだが、「そのままでいい」「ありがとう」と聞こえてくる。母に、「ありがとう、ありがとう」と繰り返し言ってみる。

 

この人生で、母に出会えたこと、母のお蔭で、素晴らしいパートナーに巡り会えたことに心から感謝した。夫と共に、この限りある人生で、この肉体を持って、できうることを一身にやり通すことができることに感謝している。

 

結婚してからの8年、私達は、ほぼ仕事だけの日々を送ってきた。正直、何度も、この簡単ではない道に夫を巻き込んでしまったことが本当によかったのかを悩んだ。女性の患者さんが多い中、電話に出ると「男の人が出るんですか!あなたじゃわかんないでしょ。女の人出してよ」と言われても、笑いながら受け流す姿を横目に見ながら、心が痛んだ。この人が、一番わかっていますから・・・と言いたいぐらいなのだが。会社を続けていると想像もしていなかったようなことが次々と起こる。状況も、信じていた人の心も変っていく。私は、こう見えてもすぐに弱気になるのだが、そのたびに、「がん患者さんにこれだけ多く出会って、そばで一緒に考えさせていただいた人は他にはいない。自分の経験と専門性を信じろ。突然がんになっても、その人が自分らしく生きられるようにサポートすることに全力を尽くせ。これからの日本にはそれが必要だ。あんたには、それができる。」と言い続けてくれた。私一人なら、もうとっくにギブアップしているであろうこの道に、この出会いをいただいて、私はこの仕事を続けている。

 

命をつなぎ、出会い、家族となり、共に生きていく。そして、この世で自分の役割を果たすために、努力し続ける。この人生を終える瞬間まで、どんなときも、清らかな心で、笑顔で。この出会いに心から感謝しながら、私達は、今日を生きていく。ありがとう。

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